ポジティブ学級日誌

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ソラの世界 オマケ小説

自主コンに投稿した『ソラの世界』のオマケ小説です
原稿用紙10枚分くらいのボリューム
計ってないけど制作時間は8時間くらいです

本編をプレイしていないと内容が分からない上、
思いっきりネタバレなので注意して下さい

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ネタバレ注意!



『ソラの世界』のラストでAの扉を選んだ場合の話になります
未プレイだったり、まだ途中だよって方はブラウザバックして下さい

本編の補足になるかどうか微妙なので、
飽くまでオマケってことでお楽しみください
頑張って書きました










ソラの世界 オマケ小説

『side sora A』

 夢から覚めたようだった。
 今までの事は鮮明に思い出せる。
 けれどぼんやりと靄がかかっているような、まるで自分の記憶ではないかのような違和感があった。
 無理もないのかも知れない。

 ――スプラウトを管理していた人工知能≪ソールシステム≫
 私はその支配下に置かれ、今の今まで洗脳され続けていたのだから。

 だが今はもう違う。
 テオ達があの人工知能を破壊し、私は自由の身となったのだ。
 私はその場に倒れたまま目を閉じ、自らの意識を取り戻したことを確認する。
 もうこの意識も身体も、他の誰のものでもない。私のものだ。
 だから、私は仲間の所へ向かわなくてはならない。





 倒れていた身体を起こし周囲を見回す。
 薄暗くはっきりとは見えないが床には機械の部品や何かの書類が散らばっていた。
 恐らくここは使われなくなった階層の一室なのだろう。
 確か、私が最後にいた場所はあの人工知能が設置されていたメインコントロール室だったはず。
 それなのに今はなぜ見知らぬ部屋に一人でいるのだろうか。私は思考を巡らせる。

 戦いの衝撃でここまで飛ばされた……というのは考え難い。
 見たところ床や天井に損傷した箇所は無かった。
 衝撃で飛ばされたのならどこか崩れていたり、穴が開いていなければ辻褄が合わない。
 ならば意識を失った私を誰かがここまで運んだのだろうか。
 だとすると一体誰が、何のために私を運んだのか。
 テオ達なら洗脳の解けた私を仲間に加えようとするはずだ。
 もしくは未だ洗脳され続けていると判断して命を奪うか。

 あの場に第三者がいたのかも知れない。
 だがメインコントロール室まで行くにはランク3のセキュリティカードが必要だ。
 テオ以外にランク3のカードを持つ者がいるとは考え難かった。

 上手く思考がまとまらないのは覚醒した直後だからなのかも知れない。
 ひとまず考えるのは後にし、私は自分の居場所を確認することにした。
 部屋を出て通路へ出るとやはりそこも薄暗い。
 ここが使われなくなった階層だとすると電気は通じていないのだろう。
 光の魔法で辺りを照らしてみると、今までいた部屋の扉に何か書いてあることに気が付いた。

 ――環境汚染対策部。

 だからこの階層は不要になったのだ。





 魔族との争いで何物も生きられないほど汚染されてしまった地表。
 人工知能ソールシステムに与えられた使命は環境汚染問題をどうにかし、人類が再び地表に住めるようにすることだった。
 だがいくら演算を試みても汚染を取り除く方法は導き出されなかった。
 誰も立ち入ることの出来ない、草木の一本も生えない世界を、どう修復すればいいのか。
 今の人類を地表に住まわせることはどう考えても不可能だった。

 ならば新たなる人類を造り出せばいい。
 それがソールシステムの編み出した答えだった。

 目的の障害となり得る者を全て抹殺し、ソールシステムはスプラウトの全てを掌握した。
 そして合成機器を開発し、人間の細胞を様々な生物と融合させ、“新人類”の製造を試みた。
 もちろんすぐに新人類が生まれるはずは無い。
 それどころか新人類の製造すら実現は不可能と言ってよかった。
 それでもソールシステムがその方法に拘ったのは、それが不可能だとまだ完全には証明されていなかったからだ。

 時間稼ぎ。
 最終的に辿り着く答えが不可能だったとしても、それに取り組んでいる間は使命を果たしていることになる。
 だが幾つもの偶然が重なり、新人類――私が生まれた。
 “彼女”がスプラウトにやってきたことは考えてもみなかった幸運だったのだろう。
 尤も、そのせいでソールシステムは破滅の道を辿ってしまったのだが。





 停止したエレベータを強引にこじ開け、上へよじ登っていく。
 頭上に見える扉からは光が漏れているのが見えた。
 もし私がメインコントロール室と同じ階層かすぐ真下に移動していたのなら、あの扉はきっと最上階へ通じているはずだ。
 テオ達もそこへ向かったはずだ。今ならまだ追いつけるかも知れない。

 入った時と同じように、もう一度扉をこじ開け外へ出る。すると部屋中の光が私を迎え入れてくれた。
 ずっと暗い場所にいたせいか光の刺激を強く感じ、思わず目を細める。

 私は仲間に加われるのだろうか。考えないようにしていた疑問が頭をよぎる。
 テオ達からすれば私は裏切り者だ。
 皆の役に立てなかったどころか、何度も敵として立ち塞がってしまった。役立たずの裏切り者。

 ようやく目が慣れてくる。
 やはりここは最上階のようだった。
 この階層には軌道エレベータへ通じる道がある。テオ達はそこにいるはずだ。
 行って、受け入れられるかどうかは分からない。
 分からないことばかりだ。

 けれど私が皆の仲間に加わりたいことだけは確かだった。





「テオはもう行ってしまったぞ」

 勇み立った足を思わず止めてしまう。誰かが私に声をかけている。
 部屋には誰もいない。確認したはずだ。
 テオはもう行ってしまった? それを誰が伝えるというのだ。私に。

 振り返っても誰もいない――が、目線の下にあったものを見て私は納得した。
 いつもテオが大事に持っていた懐中時計。
 魔王の意思が宿っているというそれが置かれていたのだ。
 いくら魔王と言えど地表で生存し続けることは出来ない。
 テオがこの懐中時計を置いていくのも当然だ。

「テオを追いかけるつもりか?」

 そうだ。無言で頷く。
 私はそのためにここまでやって来た。

「軌道エレベータはもう動き出してしまったが……我が力を使えば貴様を転送させてやることが出来る」

 かつての戦いで力の大半を失ったそうだが、魔王は時空間魔法の使い手だった。
 テオは魔王に協力することでスプラウト中を空間魔法により行き来していたのだ。

「テオには世話になったからな。望むなら貴様にも力を貸してやろう」

 是非そうして欲しい――私が声を発する前に、彼は続けてこう言った。

「だが……テオはスプラウトを見捨てた」





 “彼女”はテオに二つの選択を委ねた。
 スプラウトの生物と共に生きるか、全てを見捨てて自分達だけで生きるか。
 テオの答えは後者だった。

 信じられなかった。
 洗脳されていたとはいえ、テオとは何度も顔を合わせている。
 あのテオがそんな選択をするなんて。

 そもそも何故“彼女”はそんな問い掛けをしたのだろうか。
 テオが裏切るかどうか試した?
 裏切る可能性があるなら即座に始末するはずだ。“彼女”にはそれが出来る。
 スプラウトの人間達やソールシステムは“彼女”のためだけに利用され、捨てられた。

「情が湧いたのだろう」

 私の内心を察したかのように魔王が呟く。

「我輩は初めて奴を見た時にこう思った。目的の為には他者を顧みない、冷血な者だと」

 否定は出来なかった。その通りかも知れない。
 “彼女”の目的は詰まるところ、たった一種族の為にスプラウトの全種族を犠牲にするということなのだから。

「だが共に旅をしていて気付いた。奴はな、貴様達だけには温かく接しようとしていた」

 思い出す。
 スプラウトビル最上層でテオ達と対峙した時のことを。
 あの時、“彼女”は私に対話を試みようとしていたではないか。
 それは私を元に戻そうと思っていたということではないのか。

 だとすると私は戻っても受け入れてもらえるということではないだろうか。
 けれどそうするなら、テオがそうしたように私もスプラウトを見捨てなければならない。

「貴様は――テオ達の所へ行くことが出来る」

 懐中時計は言う。

「だがここに残ることも出来る」





 考えるだけの時間は、恐らく残されていない。
 魔王は力の大半を失っている。空間移動するにも限度があるはずだ。
 軌道エレベータが魔王の力の範囲外まで行ってしまえば選択肢はなくなってしまう。

 地表に着けば、“彼女”はエレベータを使えなくしてしまうだろう。
 テオがもうスプラウトに戻れないように。

「こう言ってしまうのは少し卑怯かも知れないが――」

 迷った風な切り出し方だったが、きっとそうではないのだろうと私は思った。
 スプラウトに残る選択を出した時点で、彼が何を望んでいるのかは明らかだ。

「スプラウトを救えるのは貴様しか残っていない」

 やはり彼は私に残ってもらいたいのだ。
 ソールシステムが破壊された今、スプラウトを管理できる者は私を除いてどこにもいない。
 このままでは遠くない未来、人間も魔族も絶滅してしまう。
 魔王はそれを分かっているのだ。だから私を引き留めようとしている。
 選択肢を与えたのは対等でいたいからだろうか。
 それとも“彼女”がテオにそうしたように、私を試しているとでも言うのだろうか。

 無駄だ。
 最初から私の意思は決まっている。

「我輩はテオと約束したんだ」

 人間と魔族が共に生きられる世界を作ると――魔王はそう続けた。





「テオが何故スプラウトを見捨てたかは分からない。だがテオはいつだって笑顔でいた」

 私がテオと顔を合わせたのはたった数度だけだ。
 しかしそれでも鮮明にその顔を思い出すことが出来る。
 そしてその中でも強く印象に残っていたのは――やはり笑顔だった。

「テオはこの世界が好きなはずだったんだ」

 だとするとテオもきっと悩んだに違いない。
 悩みに悩んだ末にスプラウトを見捨てる道を選んだのだ。
 理由は分からない。だが最後の瞬間まで苦しんだ末の答えだったのだと思う。
 そうでなければテオのあの笑顔はなんだったというのだ。

「頼む。ここに残ってくれ。我輩に約束を果たさせてくれ」

 約束。
 その瞬間、私は再び夢から覚めたような感覚に呑まれた。





 きっとテオは“彼女”を裏切れなかったのだろう。
 しかしそういると魔王……いや、友人とした約束を壊してしまうことになる。

 ――私がいなければ。

 そう、私がここに残ればテオは“彼女”を裏切ることもなく、魔王も約束を果たすことが出来る。
 テオは私が生きていると、そしてここに残る選択をすると考えたのではないか。

「……時間が無い。答えを聞かせてくれ」

 もしそうなら、なんて自分勝手で無責任なのだろう。
 テオは私に選択を押し付けて逃げ出したのだ!

「どうした? 早く答えよ。でないと……」

 それに、考えが浅いとしか言いようがない。
 仮に私が死んでしまっていたとしたら全てが台無しじゃないか。
 無茶な賭けにも程がある。

「おい! もう――」

 でも――。

「もう――行ってしまったぞ。何を笑っている?」

 テオは最後に私を信じ、頼ってくれたのだ。





 行き先不明のまま船は動き出す。
 こうすれば鈍いテオも私が生きていたと気付くだろう。
 安心するだろうか。後悔するだろうか。

 分からない。が、なんだか肩の荷が下りた気分だった。

「これからよろしく頼むぞ、ソラ」

 調子の良い声が懐中時計から耳に入る。
 これと長い付き合いになると考えると、下りた荷が再び肩に乗せられる気分だ。
 そこでふと、私はある疑問を思い出す。

 もしかして、私を誰にも見つからない階層に移動させたのはこの懐中時計なのではないか。
 尋ねてみると、この生意気な懐中時計は「知らぬな」と、とぼけた様子で返事をするのだった。


おわり

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コメント


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Aを選択すると船が動き出したのはこんな物語があったからなのですね

ソールシステム戦後にソラが消えたのも、エレベータまでソラが追いかけて来たのも魔王が噛んでたと考えると魔王頭が切れすぎる。リアンの思惑を見抜いた上でテオにも黙ってた(ゲーム内で語られなかった)ってことですからね…

テオがスプラウトを見捨てるルートが「ソラの世界」というタイトルにも繋がるのでもう本当に見事としか言いようがない

ひ | URL | 2019年01月10日(Thu)08:09 [EDIT]


ゥワオ!! コメントありがとうございます!
Aエンドの後の話を現在制作中なので以前載せた裏設定を活かして書いてみました

元々Aエンドのラストには『取り残されたソラが一瞬映る』って演出があったのですが色々あって没にしてしまいました
その結果、Bだと助けに来てくれるのにAの時は何やってんの?みたいな感じになっちゃったので、今回の話で補足してみました
正直言うと書きながら考えた部分もあるので矛盾とかないか不安だったりします

なんだかんだクライドも策を巡らせていました
ラスト直前でリアンはクライドに対して「まだいたのか」って台詞を言うんですが、リアンはクライドを軽視していたんですよね
それが出し抜かれる原因になったのです

>ソラの世界
完成直後はタイトルの意味合いが薄くなってて、急遽リアンに台詞を追加して調整したりしてました
テストプレイしてくれた方の意見がなければ今の形にはなっていなかったので、タイトル周りは8割くらいテストプレイヤーさんの功績なのです……!

ざぶとん | URL | 2019年01月10日(Thu)09:45 [EDIT]